zshio3721の日記

日本の動物園について勉強しています。アカデミックな価値は皆無です。

動物園の展示まとめ2

二つ目いきます。ランドスケープ型の展示の意図は自然の再現です。動物だけでなくそれを取り巻く環境を動物園全体で再現して見せることによって、観客に動物や自然に対する畏敬の念を養わせ自然保護につなげるという目的があるようです。まさに1980年代から動物園が模索してきた自らの役割を体現するのにぴったりの展示方法ですね。この展示にはどんな問題点があるでしょうか。


自然の再現というのは、自然の風景をそのまま切り取ってくるということです。つまり、オーセンティックなもの(自然の風景)を模倣したものを都市空間に再現する、という発想です。これって、ディズニーランドなんかとまったく同じ発想じゃないですか?

ディズニーランド(まぁ他のテーマパークでもいいんですけど)には、参照すべきオーセンティックなものはありません。言い方を変えれば、アニメの中の世界をオーセンティックなものとして、それを現実世界に再現した商業施設と言えるでしょう。長崎のハウステンボスなんかは、オランダの街並みを再現するテーマパークですがここでも同じ発想が用いられてますね。

オーセンティックなものをより忠実に再現し、現実世界との断絶をはかり、仮想空間を作り出す。これは現代のエンターテイメント施設が少なからず持っている発想です。ランドスケープイマージョンという展示方法は、その目的こそ違えど、表面的にはこれとまったく発想を同じくするものです(目的もまったく見当外れに違うとも言えません。動物園の役割には娯楽も含まれるのですから、下世話なエンターテイメントのためにこういう展示を導入した部分が無いとは言い切れない)。

意図は違えど表象が同じということは、いずれ意図が表象に従うようになってもおかしくありません。つまり、当初“科学”のために導入されていたはずのランドスケープイマージョンが、単なる娯楽のために取り入れられるようになる。なってもおかしくない。その傍証として、数年前に再生の心意気を示した八木山動物園では、園長が新聞取材に対し「ディズニーランドのような楽しい園にしたい」といった趣旨の発言をしています。


もちろんこの危機に確証はなく、あくまで可能性があるというだけですが、この逆転現象は興味深い。今後の動向をにらみつつ、論文に取り入れていきたいと思っています。