zshio3721の日記

日本の動物園について勉強しています。アカデミックな価値は皆無です。

千葉市動物公園に行きました

超絶久々に動物園の記事を書きます。このブログ、もはや何ブログでしたっけ?

みたいな疑問が湧き始めたから書くということでもなく、実はこれまでも、動物園を訪れても記事にしないことがちょくちょくあったんですよ。京都市動物園や、東山動物園、天王寺動物園王子動物園江戸川区自然公園なんかがそれに当たります。多いな。旭山動物園すら書いてないわけですし。まあ、旭山は、ブログを始めるより先に訪園したのでアレなんですけどね。あと到津の森公園。ここは旭山と並んで素晴らしい動物園なので、いつか記事にしたいんですけど。

ただ、千葉市動物公園については書きたかった。その理由は、必ずしもポジティブなものではありません。

まず、千葉市動物公園と言えば誰もが思い浮かべるのが2014年のリスタート構想でしょう、というのは動物園ジョークでありまして、本当に千葉市動物公園において有名なのは、というか、有名だったのは、レッサーパンダ風太です。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200705-OYT1T50000/

2005年のことです。ネットサーフィンベースの情報ですけど、今は彼の子供であるクウタが立ち上がっているらしいです。

で、まぁ、動物園においてはたまにあることですが、こういうスター性のある個体が動物園の人気を一時押し上げました。こうした例は、古くは天王寺動物園チンパンジー、リタに求めることができます。

それで、これもよくあることですが、その後すぐにブームは去り、来園者は減少の一途をたどります。そして園は岐路に立たされるわけです。

少し話はそれますが、この頃、つまり2006~2007年にかけては旭山動物園が年間来園者数300万人超えという、奇跡のブームを叩き出します。

https://yorimichi.airdo.jp/asahiyama_kakijiro

上記は全然関係ない旭山動物園のインタビューなんですけど、板東園長があまりにもかっこよくて貼ってしまった。

さらにもう一つ、公設動物園界には(そんな“界”があるのかという疑問はさておき)、この頃ムーブメントがあります。指定管理者制度の導入です。2003年の地方自治法改正以降、上野、葛西を筆頭に同制度が導入されはじめました。

ここで思い出していただきたいのが、千葉市動物公園は都市近郊の大型動物園にしては珍しく公設”公営“であることです。この時期、多くの公設動物園が地方自治体の予算制約を背景に民間に下った一方で、千葉市動物公園は公営のステータスを維持する選択をしました。この背景はよく分かりませんが、風太が一役買っていたとしてもおかしくないでしょう。つまり、千葉市動物公園は「稼げる園」だから大丈夫、ということです。

しかしながら現実、レッサーパンダブームは永続きしませんでした。後述する「千葉市動物公園リスタート計画」の構想概要によれば、来園者数はピークの年間約88万人(2006年)から、同63万人(2012年)と約3割減。

さてこの頃、時を同じくして、千葉市動物公園と同じく公営の旭山がヒットします。旭山は、北海道という土地柄も存分に生かした「行動展示」という確固たるオリジナリティある園ですから、千葉市動物公園にはおいそれと真似できませんでした。かといって、今さら指定管理者を導入しようにも口実がいまいち立たない。旭山にも、上野にもなれないのが千葉市動物公園の苦悩だったと思います。この辺は筆者の邪推が多分に入っていますが、中らずも遠からずだと思います。

そうした苦悩の2000年代を経て、辿り着いたのが石田おさむ氏を園長に迎え入れる決意と、冒頭のリスタート構想でした。

https://www.city.chiba.jp/toshi/koenryokuchi/dobutsukoen/restartkoso.html

千葉市のHPには平成29年版しかありませんが、初版(2014年、和暦西暦ごっちゃですいません)はpdfで簡単に見つかります。

当時私がもっとも感銘を受けたのは、園内の遊園地を廃して駐車場にする計画です。幾度かの検討会を経て、遊園地は「教育の場」である動物園に相応しくないとして廃園が決定されます。地元住民の反対も相応にあったと推察されるもとで、勇気ある決断だったのではないでしょうか。記憶が正しければ、これは上野動物園が遊園地を廃するよりも早かったはずです。石田氏のもと、こうした「まともな」決断が着々となされていく様子は、日本の動物園界の新たな夜明けを感じさせました。

ところが、ということで、ここまでの話をひっくり返させていただきますが、今回の訪園は、大変失礼ながら、やや失望的であったと言うほかありません。幾つか挙げさせていただきます。

まず、2020年夏、つまり完成したばかりのチーター・ハイエナ舎です。アニマルウェルフェア、ないしは生息環境展示の観点から、周囲の遊歩道整備も含め、新しい風を感じました。

一方で、どこかで見たことのある展示なのです。それは、横浜動物園ズーラシア。同展示は、酷似していると言っていいほどでした。横に長い全体観、展示へのアプローチ、植生、金網とガラス張りの併用。「実はハイエナは、ディズニーが作り上げたずる賢いイメージとはかけ離れていて、家族想いの動物で」ほにゃほにゃという説明。

似ているから悪いということもありませんが、公営を貫き、民間企業から園長(東芝出身、鏑木一誠氏)を迎えて1年以上経つ、独自性溢れて然るべきはずの園が、どうして確固たるオリジナリティを確立していないのでしょうか。

園内で執り行われるビアフェス的なものも、のぼりやら何やらのデザインに申し訳程度に動物の前肢があしらわれているだけで、これが「教育、種の保全、調査研究、レクリエーション」の何にあたるというのでしょうか。あと、普通に、イベントとしてありふれすぎてませんか。ビアフェスなんて、そこらの百貨店の屋上でやってますけど。

という、ちょっと残念なお気持ちでしょんぼりしていたところに、「ふれあいの里」なるゾーンに足を踏み入れて、びっくりしてしまいました。遊園地によくある遊具が、そっくりそのまま置かれているのです。というか、これ、廃園したときに、処分料もったいないから置いたんちゃうんか、と思わせるような、平成真っ盛りに作られましたみたいな、乗って遊ぶタイプの動物遊具が、親子を乗せてゾーンのあちこちを動き回ってるわけです。まあ、微笑ましいからいいんですけど。

ということで、今一信念を貫けない千葉市動物公園に日本の行政の一端を垣間見ました、とまで言うと超性格悪いっぽいので、いちおうフォローさせていただきますと、まだまだ人は、というか日本人は、動物園に行くんだと思います。つまり、例えば旭山は、1990年代に、飼育動物からエキノコックスが出てしまうという事件を二度もやらかして、本当の本当に廃園の危機に迫られて今のモデルを構築したのです。千葉市動物公園を始め、他の動物園には、そこまでの危機感はないでしょう。ないです。なんだかんだ、みんな動物園に来てくれるから、なんとかやっていけてるね、よかったねっていうのが、15年近く続いてるんです。

この辺、まぁいいんですけど、何とかもっと面白いことにならないですかね。という夢を見ながら、本稿は終了です。ありがとうございました。