zshio3721の日記

日本の動物園について勉強しています。アカデミックな価値は皆無です。

上野動物園の展示手法


さて、今日もクソ暑いですね。今日は日本の動物園の代表とも言える上野動物園を取り上げます。

本題に入る前に、上野動物園といえばその経営手法が独特ですよね。国を代表する動物園でありながら、国に所属する機関ではありません。つまり国立ではない。同じ敷地にある科学博物館は当たり前のように国立なのに、面白いですよね。博物館はれっきとした教育施設だけど動物園は博物館相当施設にすぎなくて、まぁこれが法律上の動物園のあいまいさってことにつながるんでしょう。

まぁそんな感じで歴史も含め色々あいまいな上野動物園ですが、今回はその展示方法の話をしていきます。

1980年代の終わりから、ズーストック計画などに体現されるように科学としての場をより強調することを半ば義務付けられてきた日本の動物園ですが、上野動物園も例に漏れません。この頃から建設される動物舎では、展示手法にも変化が見られます。

そこに触れる前に、それ以前の展示方法について先に言及しておきます。

最初に触れておくと、私が展示という単語を用いる時、そこには二つの含意があります。一つは、「観客と動物をどう仕切るか」という意味での展示。すなわち、ケージなのか、柵なのか、それともガラス張りなのか?という問題。もう一つはその仕切りの中身という意味での展示。すなわち寂しいコンクリ打ちっぱなしなのか、生息環境を忠実に再現しているのか?という問題。前者のことは「仕切り」あるいはそのまま「展示」、後者のことは「演出」と呼び、この二つはまったく別のものとして扱います。さらに、僕の問題意識で扱うのはほとんどが前者です。

さて上野動物園でズーストックなどが意識される前の展示は、ケージと溝(モート)が主ではないか、というのが僕の観察です。これは主に西園を見るとお分かりになるかと思います。ケージの代表例はキリンやオカピ、シマウマなど。モートの代表例はクロサイなど。1980年代以降は、これらの仕切りに取って代わって以下の展示が発達します。

まず完成するのはゴリラとトラのすむ森です。詳しい年代だの解説だのは然るべき文献を見てもらえればいいと思うのですが、私が今回注目したいのはその展示の方法です。このゾーンではゴリラやトラの周りに檻ではなく擬岩のようなものが配され、ところどころがガラス張りで仕切られるという構造になっています。このような仕切り方が上野動物園では次第にメジャーになります。

その証左として、続いて東園に完成するゾウのすむ森、クマたちの丘などにも同様の仕切り方が取り入れられていきます。それぞれ、ゴリラとトラのすむ森とは違う点があるので触れておきます。

まずゾウ舎は、上記以外の仕切り方として電気柵による仕切りが一番最初に目につきます。これは正門から入ってパンダ舎をとおりすぎると左手にすぐ確認できます。余談ですが僕はこの仕切りを溝(モート)による仕切りだと勘違いしていましたが、文献をあたったところおそらく電気柵のようです。次にクマ舎は、上からクマを覗き込むように、高さによる仕切りがあります。ホッキョクグマの展示と合わせて考えると、「距離による仕切り」があると考えてよいでしょう。

いずれにせよ重要なのは、大型哺乳類をガラス張りで仕切るようになったという事実です(この段階ではまだ仮定、推測の域を出ませんが)。
前回の記事でも、ズーラシアで霊長類がガラス張りで仕切られていることにふれました。

これらの仕切りの方法はいったいなにを意味するのでしょうか。その含蓄に関してはまた次回以降。