zshio3721の日記

日本の動物園について勉強しています。アカデミックな価値は皆無です。

クサいのは、お嫌いですか?


ずーっとまじめな著作に関する記事が続いたので、今回は日常的な話をば。


「動物園、そんなに好きじゃないんだよね。」

夕方のカフェで、友人がこんなことをつぶやきました。彼は続けます。

「どっちかっていうと、水族館のがいいな。魚好きだし。」

気になった僕はいろいろと質問を投げかけてみました。

「動物園って水族館とちがって、動物のリアルな匂いがするじゃん。あと屋外だから夏暑くて冬寒いよね。そういう“リアルさ”みたいなのが嫌なの?」
「魚が好きなのか、じゃあイルカはどう?イルカショー観るのとか、どう?サメは?タコは?クラゲは?クリオネは?」
「水族館にも“ふれあいコーナー”みたいなのあるじゃん?あそこでナマコとか触るのは好きなの?」
などなど。

僕が彼だったら、さっきまで死んだ目をしながらコーヒーすすってたくせに動物園の話になった途端こんなに色々嬉々として聞いてくる人間にはドン引きしつつそいつのいないグループラインにこっそりそいつの悪口を書き込んでもおかしくないような勢いでしたが、彼は(そんなに)嫌な顔せずに答えてくれました。以下にまとめてみます。

・動物園の匂いなど、リアルな部分は確かに苦手。
・水族館で観られるような、“生態の展示”が好き。特に魚が好きなので、魚と相性の良い水草や背景のレイアウトを考えたりするのが好き。
・幼い頃から実際の海に触れる機会が多少あったので、ふれあいコーナーにはあまり興味がない。いろいろ触ったことあるから。
・クラゲ?別に…


ほー。なんだか二つの側面が彼の中で交錯しているように思います。

一つは彼の都会的な側面。「クサいのとか暑いのとかないわー、マヂ無理(笑)」というメンタル(伝わらないか…?)、これをシティ派メンタルと名づけましょう。シティ派の特徴は人間による管理を好むことです。空調しかり、その他環境しかり。シティ派にとっては動物やその見方すらコントロールされていることが快く感じられます。「ガラス張り、ガラス越し」っていうのはコントロールされた観察の仕方の象徴ですよね。

もう一つは「漢なら自然を直肌に感じやがれ、自然は思い通りにならんもんじゃい、がっはっは」というメンタル、これをネイチャー派メンタルと呼びましょう。ネイチャー派の特徴は自然との共生を好むことで、現代の日本社会においては本当の意味でのネイチャー派は絶滅寸前でしょう(山登りが好きな人はたくさんいますが、山に住み着いて山と共生している人は少ないだろう、ということです)。


彼の中ではこの二つの側面が互いに作用しながら自然に対する価値観が形成されているように思われます。小さい頃に海で色々な魚に触れて、ネイチャー派メンタルが培われた。つまり魚が好きになった。でもその中で自然の厳しさなんかを知っていって(海で溺れかけたり)、同時に都会的な普段の生活の快適さに気づいて、シティ派メンタルがネイチャー派メンタルを駆逐してしまった。でもネイチャー派メンタルは完全に駆逐されたわけではなくて、ささやかながら自然を楽しむ気持ちも残っている(ネイチャー派メンタルがゼロだったら、そもそも魚に興味もないですよね。展示に興味があるだけなら、たとえば京都の石庭の方が好きなはず)。

こう考えると、水族館ってシティ派メンタルを強く持つ人にも、ネイチャー派の人にも受け入れられる場所ですよね。翻って動物園はある程度ネイチャー派メンタルを持つ人の方が行きやすい。暑いし匂うし動物もちゃんと見られるか分からないけど、自然ってそういうもんだよねーと割り切れる人でないと、なかなか行きたがらないんじゃないかな。

こういう動物園の側面とどう向き合っていくかって話ですよね。僕は別に動物園の経営者でもないから、「みんな、動物園はこんなに楽しい場所だよ!もうクサくないよ!来てね!」というモチベーションは僕にはないんですわ。でも僕のやるべきことのひとつは動物園の存在意義を考えることですから、みんなにとってどんな動物園が必要とされているのか、あるいはそもそも必要されていないのかに興味はあります。動物園って、これからどうなっていくんだろう。

別れ際に、彼が面白いことを言ってくれました。

「動物園も水族館も年パス買って何回も行くのがよく分からないんだよね。何回行ってもいる動物は一緒じゃん」

たしかになぁ。でも展示内容が変わったら動物園や水族館に足を運ぶわけでもないだろうね、この子は。水族館の年パスを持ってる身としては、自分がなぜ何度も同じ水族館に行くのか、説明できなきゃなりませんね。


というわけで、動物園と水族館を取り巻く二つのメンタルを対比しながら書いて参りました。ここでなんかさらっと面白いオチでもつけられたら僕ももうちょい実生活で人気者になれるのかな。なれねーかな。

次回も頑張ります、それでは。